China Beauty Headline|独身の日で注目の中国ブランド、なぜ売れた?

中国ライブコマースの新規制で何が変わる?中国の新ブランドウォッチ、CBDスキンケアが誕生
臼井杏奈 2020.12.01
誰でも

独身の日、唯一のTOP10入り国産品「薇诺娜」のマーケティング

TmallのW11(独身の日、双11)の美容カテゴリー取引額TOP10のうち9つが海外ブランドで、唯一入った中国ブランドが9位の「薇诺娜(Winona)」でした。TOP10入りは3年連続で、合計販売額は7億元(105億円)に達しました。

「薇诺娜」は敏感肌向けのスキンケアブランドで、今回、特に人気だったのは独身の日限定のカスタムスペシャルギフトボックス。1次予約開始から10秒で8万個が売り切れました。また人気製品である抗敏感シリーズのクリームは1億8000個を、フェイスパックは136万9000枚(1箱6枚入り)を販売。限定コラボのディズニーパッケージも人気でした。

これまでも人気だったとはいえ、なぜ「薇诺娜」は唯一のTOP10入りを果たせたのでしょう?大きな理由として、コロナ禍で敏感肌に悩む人がより増えたことが挙げられます。しかしそれだけなく、ブランドがセール期間に行った話題を起こす施策も効果的でした。今年のセール時のマーケティングを3つのポイントで紹介します。

1 多媒体でコンテンツ発信

Image:「薇诺娜」<a href="https://m.weibo.cn/2392331834/4561705130008601">Weiboに投稿された動画</a>

Image:「薇诺娜」Weiboに投稿された動画

「薇诺娜」は敏感肌の専門家というイメージを発信し続けているブランドで、学会への参加や研究発表などを行うほか、コンテンツも重視しています。イメージ発信だけでなく、口コミ、レビューなどの「种草」(認知させ、興味・関心を持たせる)など多様な種類のコンテンツで、段階的に掘り下げています。また配信先もWeibo、WeChat、抖音(中国TikTok)、小紅書、Bilibiliなど、主要なSNS を全カバー。

W11前には様々なプラットフォームで関連トピックを拡散。小紅書(RED)では、KOLとKOCが400以上の紹介投稿を発信しました。また10月中旬には「燃える」夢を描く動画を配信。動画はブランド哲学に親和性のあるストーリーが展開され、最後にW11の宣伝が入るもの。この動画は若い消費者の反響を呼び、関連するWeiboトピック「#无惧敏感 燃就购了#」は1787万視聴、24万以上の投稿を獲得しました。

2 ライブコマースで注目を集める

ライブコマースに出演するアンバサダーの吴宣仪(左)と李佳琦 Image:Weibo

ライブコマースに出演するアンバサダーの吴宣仪(左)と李佳琦 Image:Weibo

セール期間にはクリームのアンバサダーを務めるアイドル吴宣仪(Betty)が頻繁に登場。SNS 投稿や宣伝動画だけでなく、ライブコマースにも出演して話題となりました。またトップライブ配信者の李佳琦(Austin)も抗敏感シリーズのクリームを宣伝。どちらも直接の売り上げを狙う施策ではなく、既に認知度の高いものでありながら、セール時の大きな話題として投資したようです。

3 IPコラボでマスへアプローチ

ライブコマースへのアイドルの出演がファンへのアプローチ、SNS での拡散がインフルエンサーのフォロワーへのアプローチだとしたら、IPコラボはマス層へのアプローチ法です。「薇诺娜」はW11を前にディズニーとのコラボ製品を発売。ファンタジアの魔法使いに扮したミッキーをデザインし、“肌の修復魔法”をかける姿を表現しています。

このほか、映画館の上演前CMやオフラインでの宣伝など多角的、継続的な取り組みでブランドの露出は通常時の倍になったといいます。このように1つではなく複数のレイヤーで継続的に若者にアプローチし、様々なコンテンツにより「敏感肌の専門家」という印象を押し出しました。

一つ一つは他社も行っていることですが、すべての蓄積が相乗効果を生み出した結果といえます。ただでさえオンライン上の広告が膨大で消費者へのアプローチが難しくなっている中国なので、(根性論みたいですが)全てをやり切ることは一つ大きな要素だと感じます。

中国ライブコマースに規制…何が原因でどう変わる?

中国の放送行政などを担う国家広播電視総局(広電総局、NRTA)はネット上のライブ配信に関する規制案を公表した。ライブ配信を手掛ける企業を登録制とし、未成年がお金を払って応援する「投げ銭」をすることを禁止する。動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)や快手などのサービスが念頭にあるとみられる。

またAFPBB Newsによると、新ガイドラインでは「富の誇示や拝金主義などの悪習慣がまん延することを防ぐため」「不道徳で非倫理的な表現者に、公的な場へ姿を現す機会を与えないようにする」と表明しているといいます。富を見せびらかすこと、露出の高い服や性的なダンス(ってなんだ?)などが問題視されているようで、これはライブコマースだけでなく動画共有サービス全体の話のようです。

さらに動画の出演者には実名確認が義務付けられ、場合によっては顔認証も必要に。また、著名人や「外国人」が配信チャンネルを始めた際には動画配信サービスが当局に報告する必要があると定めました。これらのルールは動画市場が正しく発展するためのもので、規制と言われていますが市場の公正を保つものです。今年1月にソーシャルバイヤー(いわゆる爆買いの代購)が規制された時も、その存在を規制するというより市場が正しく発展するための整備の意味合いでした。中国は自由競争→拡大してから政府が整えるという流れが多いです。

そのほか、最近のライブコマース関連の話題

・ビリビリ動画、KOLによる配信強化へ

MCN(マルチチャンネル・ネットワーク)との提携プラットフォームを正式にオープンし、提携先の募集を開始した。ビリビリと提携するMCN機構は、UP主(動画クリエイター)との契約管理、データ分析、注文管理などの機能を備えた広告プラットフォーム「花火」を利用することができる。(36Kr Japan

・有名な中国のテレビ司会者である王漢が、家電ライブコマースで司会進行を務め、放送中に1323個販売された。しかしそのうち1012ユニットが返品された(払い戻し率76.4%)ことで、サクラなのでは?とネットで炎上。こういった数字の捏造は最近の問題となっている。(JingDaily

新中国ブランドウォッチ

気になる中国ブランドを見つけたので、少しだけ紹介します。

CANNAFEVER

CANNAFEVER

CANNAFEVER

9月末にTモールに出店した新規ブランド。名前の通り、カンナビス(大麻)由来のCBDを使用したスキンケアブランド。もっちり泡のフェイスウォッシュや1回使い切り型のアンプルが代表製品。今後は有名店を含むオフライン展開を予定している。共同創業者の夏玥は小紅書の初期メンバーでコンテンツマーケティングに精通しており、また代表の姜延喆は長年、産業用大麻の研究を行なっていた人物。(聚美丽

半月浮生

半月浮生

半月浮生

洗剤で有名な「立白」の立白集団によるメイクアップブランド。11月3日にTmallデビューしたばかり。ブランドコンセプトは「東洋の女性にぴったりなメイクアップを作り出す」ことで、アイメイクが中心。国潮っぽいテイストです。(聚美丽

この記事も読みたい

・ファンケル・アジア代理店買収に10社以上が関心(REUTERS

・中国企業Q3決算まとめ(テンセント、アリババ、京東等)(チャイトピ!

・中国進出支援のトレンドExpressに聞く、中国マーケティングを成功させる3つのポイント(WWD JAPAN.com

・爆速成長中の新鋭デザイナーズブランド「bosie」が約31億円を調達(36Kr Japan

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独身の日関連はもっと書きたいこともたくさんあるのですが、新しい動向や注目すべき点みたいなのはほとんどWWD JAPAN最新号で書かせていただきました。まとまってるので是非読んで下さい〜。

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円換算レート:1ドル=105円、1人民元=15円|Writing : Anna Usui - supported by ‘the Letter’

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