China Beauty Headline|話題の中国ブランドの日本初店舗に行ってみた

賛否両論のムーランから学ぶべきポイントは?、OMOを体現する化粧品店が上海で拡大中
臼井杏奈 2020.09.15
誰でも

今日は3本を長めにお送りします。中国で人気の上がっているブランドの日本旗艦店を見てきた話を入れているのですが、要注目ブランドなので店舗自体よりブランドの存在と「流行った理由」に注目して読んでいただきたいです。

TOPICS|映画「ムーラン」関連の動きが続々、映画への反応は?

Photo from 三草两木 / Weibo

Photo from 三草两木 / Weibo

11日にディズニー実写映画「ムーラン」が国内劇場で上映を開始した。当初は春に公開予定で、その時期に合わせていくつかの「ムーラン」コラボコスメも発売されていたが、この映画のフィーバーでどうなっているのだろうか?新たな動きも含めて見ていこう。

人気沸騰中のスキンケアは映画前に広告ムービー

Photo from 纽西之谜 / Weibo 

Photo from 纽西之谜 / Weibo 

今年爆発的な人気を見せた「ジェオ スキンケア(Geo Skincare、纽西之谜)」はこの映画の上映前に入るプレスクリーニング広告を全国の主要都市の劇場、10万件以上で展開した。ブランドは「自然な美しさ」を提唱しており、ムーランの力強い、ありのままの美しさとメッセージで似通う点がある。またブランドはニュージーランド発で、映画もロケ地としてニュージーランドを選んでいるなど共通項が多い。

働く女性は現代のムーラン?ブランドストーリーと共通点

Photo from 三草两木 / Weibo

Photo from 三草两木 / Weibo

同じく、ムーランの特徴とブランドストーリーを重ねたのが、国産スキンケアブランド「三草两木」。ムーランの忠誠心、勇気、誠実さに対して、ブランドは国の文化への忠誠心、変化と探求する勇気、そして女性の真の美しさの解放を持ち、似通うことからコラボパッケージ製品を発売。またブランド製品を使用する女性たちも「職場という戦場」で戦うという点で、ムーランと近しいというメッセージもあるそう。

正直これらは国産ブランドで、国潮(中国伝統文化の要素を含むもの)であれば他のブランドでも要点を満たすため、他のブランドも続々とコラボ製品を販売しています(関連記事を参照)。ブランドのストーリーを表すのにはうってつけの機会だったようす。

関連記事:化粧品×タピオカが大ブーム?!中国が仕掛ける異色のコスメコラボ(China Cosmetic Lab

では、映画「ムーラン」への反響はどうだった?

「ムーラン」は4度の公開延期の末に、Disney+で公開され、はやくも海賊版が出ているそう。その後、ようやく映画館公開となりましたが、中国では賛否両論。ムーランの真の強さや忠誠心などは好評ですが、否定的な意見も散見されます。

中でも指摘されるのが、欧米が持つ東洋文化の誤解やステレオタイプを反映したメイクアップ、「悪魔化された」キャラクター作りです。「パイレーツ・オブ・カリビアン」でも中国系の海賊が登場していますが、特徴がそっくり。女性はメイクも似ているし、男性悪役も似たような風貌です。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」(上)と「ムーラン」(この後、頬を赤く塗られます)

「パイレーツ・オブ・カリビアン」(上)と「ムーラン」(この後、頬を赤く塗られます)

また現代の中国の美意識からも外れており、中国に対して誠実じゃないという評価も多く聞こえます。この映画に関する指摘で化粧品ブランドも学ぶべきところは、「中国で売りたいなら、中国のことを知る必要がある」ということ。「ディオール」「ドルチェ&ガッバーナ」だけでなく、ディズニーも学ぶべき点だったと言えます。

TOPICS|これぞOMO!新たな化粧品店が上海で拡大中

Photo from <a href="https://www.bonnieclyde.com/">Bonnie&Clyd</a>

Photo from Bonnie&Clyd

高級美容ギフトショップの「ボニー&クライド(Bonnie&Clyde)」が上海で店舗を拡大している。場所は上海太古汇、K11、静安ケリーセンタの3つで、いずれも上海の代表的なモールだ。最初の店舗となった静安ケリーセンター店はオープン直後の1ヶ月で15万ドル(約1575万円)を売り上げた。

このショップは「SUQQU」を含む海外のニッチなラグジュアリーブランドと(一部は独占販売)契約をし、オン・オフライン両方で提供される1対1のVIPサービスの他、「オフラインで試してオンラインで購入する」システムや、上海なら4時間以内の配送サービスなど、行き届いた体験とオムニチャネルを実現している。

Photo from <a href="https://www.bonnieclyde.com/">Bonnie&Clyde</a>

Photo from Bonnie&Clyde

また2500人以上のKOLマイクロコミュニティーを管理しており、KOLとブランドや製品のコミュニケーションを深めることで、フォロワーグループの直接販売が自然に行われるようにしている。「Jing Daily」によると消費者ターゲティングに加え、カスタマイズされたマイクロコミュニティーコンテンツが功を奏し、割引なしで毎月2桁の成長を遂げているという。

コメント:このようなショップに入ることでオフラインの接点が持てるだけでなく、ニッチなブランド単体では難しいオムニチャネルや短時間配送をかなえられるという利点があります。さらに接客や体験価値を与えられるのもメリットで、今後の成長に期待です。また「オフラインで見てオンラインで買う」流れは中国ではそこそこ見られる仕掛けです。越境ECのみで展開しているブランドがテスターのみオフラインに持ち込むというパターンも見られます。

関連記事:オフラインの出店が急増!中国でリアル店舗が見直される理由(ChinaCosmeticsLab

REPORT|上場で話題「農夫山泉」傘下の中国コスメ店にいってみた

筆者撮影

筆者撮影

中国のボトルウォーターメーカー農夫山泉が9月8日に香港で上場し寄り付きが39.8香港ドル(約560円)と、発行価格から85.12%上昇した。時価総額は4452.92億香港ドル(約6兆2000億円)になり、そのため創業者の鐘睒睒氏は資産額が5000億香港ドル(約7兆円)となり、テンセントのポニー・マー氏、アリババのジャック・マー氏を上回り、長者番付で中国1位となった。

この農夫山泉は化粧品ブランドを傘下に抱えている。それが「YOSEIDO(養生堂)」だ。北欧の伝統的な白樺樹液を使用したアイテムで、2018年10月に日本でローンチし、伊勢丹新宿本店の「ビューティアポセカリー」でポップアップストアも開いていた。36Krによると、日本市場は日本企業からの誘いで進出したそうだ。

その「YOSEIDO」が日本では7月にリブランディングし、「KOIVE(コイヴ)」として再出発。8月末に初店舗を銀座にオープンしたので覗きに行った。場所は先日オープンした「SHISEIDO」グローバル旗艦店が並ぶ松屋通りで、斜め向かいには花王の「ソフィーナBEAUTY  BASE」がある好立地だ。そんな場所に、地下1階〜2階まで3フロアを有するのだから、なかなかの気合いの入れっぷり。

筆者撮影

筆者撮影

1階はスペースを贅沢に使ってアイテムを見せており、ラインナップはこれまでとほぼ同じ、白樺樹液を使用したトナーやフェイスパック、クリームなどが並ぶ。地下にはライブ配信などを行う体験スペース、2階にはブランドの世界観を表現した北欧料理のカフェがある。地下は閉鎖されていたので見れなかったが、最新の青空照明もあるらしい。

Photo from <a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000061552.html">prtimes</a>

Photo from prtimes

北海道から持ってきたという白樺を無数に生やしたフォトジェニックな空間には、ARを駆使してポイントゲットができる体験が隠されているそうだが、隠れすぎて気がつかなかった…。日本人の美容部員さんが百貨店さながらの丁寧な接客も、すべて贅沢な体験だった。

■ YOSEIDOの人気の理由は親会社にあり?

筆者撮影

筆者撮影

中国での人気は高まっており、小紅書のデータによると、上半期の「YOSEIDO」アカウントのコンテンツ表示量は600%増だったといい、抖音のアカウントも好調。直近では高級ラインも販売開始した。この「YOSEIDO」の成功の秘訣を、中国メディア「化妆品观察」は3つのポイントで解説する。1つは白樺樹液という天然の原料での差別化。2つめは農夫山泉の持つ、水についての研究力。そして3つ目も農夫山泉の持つ技術を応用した、製品の高い品質だという。

中国ではブランド名を変えず、「YOSEIDO」の名前で認知度が高まっている。一方で店舗では(名前は小さく残っているものの)新ブランド名が押し出されている。銀座といえば中国客向けの出店が多いが、この店舗はあくまでも日本でのブランド発信に重点を置いているということのようだ。とはいえ、体験スペースなどは越境ライブコマースが予想されるし、中国からの観光客が戻ればまた変化もありそう。「KOIVE」の今後にも注目したい。

【店舗情報】〒104-0061 東京都中央区銀座4-5-1 聖書館ビル/銀座駅から徒歩1分/営業時間:11:00-20:00

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後記:中国に行けるようになったらレポートしたい場所が多くありますが、国内だと限られるのが悩みどころ。今後もしばらくは国内であれこれ回りたいと思っていますので、リクエストがあればお待ちしています。銀座に行かれる際は、ロフト2階の中国コスメが並んだ売り場なども見ても面白いかも?

こんな内容が欲しい、質問があるなどのご意見ご感想・リクエストはこちらまでお願いいたします。

本文中の円換算レート:1人民元=15円、1ドル=105円

Writing : Anna Usui - supported by ‘the Letter’

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