China Beauty Headline|TikTokの売却に暗雲

小紅書の最新コスメレポートを読む=新型コロナの影響は?ライブコマースアプリに転換期、脱淘宝の抖音・快手と対照的な小紅書の理由
臼井杏奈 2020.09.01
誰でも

今週のChina  Beauty  Headlineは中国アプリの話がメインです。順調に成長してきたアプリたちに転換期が訪れています。また中国の最新美容データも紹介します。

NEWS|TikTokが四面楚歌=CEO辞任、中国の技術輸出規制…買収合意期限は15日

Photo by @solenfeyissa from Unsplash

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中国バイトダンス(北京字節跳動科技)傘下の動画運営投稿アプリ、TikTokのケビン・メイヤー最高経営責任者(CEO)が8月27日に辞任した。着任からわずか3か月弱だった。後任は米TikTokゼネラルマネージャーを務めたバネッサ・パパス氏。

TikTokは米国事業を売却するか、米国で取引禁止になるかという危機に直面しており、8月24日にはトランプ米大統領がTikTokやバイトダンスとの取引を禁じた大統領令は違憲だとして法的措置に出ていた。トランプ大統領は米国事業の買収合意が成立しなければ、15日付けで運営を禁止すると表明しており、買い手候補にはマイクロソフトとウォルマートの連携や、オラクルなどが浮上している。

バイトダンスの張一鳴=創業者兼CEOは社内メモで、米国と既にアプリが禁止されたインドでの解決策を迅速に作ると通達しているが、ロイターによると8月27日には米国事業の売却が合意とならず、サービス停止を迫られた場合に備えて対応策を検討するようエンジニアに指示したという。

さらに8月29日、中国の商務省と科学技術省が「中国の輸出禁止及び制限時技術リスト」の改訂を発表。中国の国営通信・新華社によると、技術貿易を専門とする中国対外経済貿易大学の崔凡教授は、「改訂リストの関連技術の輸出を計画している場合は、審査(秘密保持審査)の手続きを経る必要がある。バイトダンスは関連する取引の実質的な交渉を一時停止し、法的手続きをするか慎重に検討すべきだ」とコメントしたという。AI(人工知能)やその他最先端技術を持つバイトダンスの米TikTok事業売却に暗雲が立ち込めている。

考察:中国側の話は簡略化すると、「このままだと技術を外に出せないかも=売却できないかも」ということ。申請が承認されれば、技術輸出許可の同意書が取得でき、外国との交渉を行うことができます。しかし残された時間はわずかで、どう売却を成功させるかの瀬戸際に立たされています。最終の売却完了期限は11月15日です。

このままTikTokが米国で禁止となれば、化粧品やラグジュアリー業界にとっても被害は甚大です。既に多くのブランドが広告宣伝の場としていますし、最近ではTikTokerが立ち上げたメイクブランド(Nel  Twinsや、Addison Rae)も続々デビューしています。しかし、既に多くのTikTokerは、インスタグラムやYouTubeといった他のSNSにフォロワーを誘導し始めています。

関連記事:

・コラム:TikTok巡る大混乱、辞任するトップの適時選択(Reuters

・マイクロソフトがTikTokを喉から手が出るほど欲しがる理由(ForbesJAPAN 8/4)

・なぜ米国や日本は、TikTokを禁止しようとしているのか(The HEADLINE 7/30・一部有料)


TOPICS|小紅書がコスメレポートを発表、18歳以下ユーザーや動画コンテンツが成長

小紅書appのWeChatアカウントから

小紅書appのWeChatアカウントから

“中国のインスタグラム”と言われるSNS「小紅書(RED)」は30日、市場調査会社Ipsosと共同で「小紅書コスメ・美容業界インサイト2020年中間レポート」を発表した。中国の化粧品・美容業界は新型コロナによる落ち込みがあったものの、4月には化粧品の小売販売が急速に伸びてプラス成長に転じ、今年の化粧品類の消費額は3164億元(約4兆8380億円)に達する見込みだ。

小紅書の月間アクティブユーザー(MAU)は1億人を超え、今年6月時点で小紅書で美容コンテンツを利用するユーザーは全体の56%に達したという。特に18歳未満のユーザーグループの美容コンテンツの消費は158%増と伸びており、彼らの中で国産ブランドの人気が加速しているようだ。また男性の美容コンテンツのニーズも伸び続け、同46%増だった。

中国の美容消費の中で存在感を増す20歳前後の学生たちは、リップやベース、アイメイクに関心を持っている。スキンケアは美白やにきびの除去と肌の修復が主なニーズだ。美白とにきびはマスクの着用による肌荒れから、学生だけでなくニーズが高まっている。

アイテム別では、スキンケアやパーソナルケアが伸びた。特にボディケアの需要が急速に高まり、スキンケアではアイケアやフェイシャルマスクが人気だった。海外のミドル〜ハイエンドのブランドが依然として注目を集める中、新興の国産ブランドも上半期に大きく成長し、コンテンツ消費で見ると中国コスメの「COLORKEY」は約85倍、「Gurlcult」は約30倍、丸美は約40倍と人気が爆発している。いずれのブランドも、単に安いだけでなく「手頃で高品質」と評判だ。

小紅書ユーザーの36%がSNSを通じて美容情報を得ており、美容消費ユーザーの70%がSNS投稿の影響を受けて商品を買うか検討しているという。そういったユーザーたちに影響を与える美容に関する投稿の総数は前年比108%増で、動画での投稿が増えた(同113%増)

考察:小紅書はライフスタイル全般が投稿されるアプリですが、美容が最も大きなカテゴリーです。今までは画像の投稿が主流でしたが、縦型で1〜5分程度の動画が増えています。

画像とテキストにより構成される投稿は、パッと見の発色やパッケージの豪華さは分かりやすい。一方、動画ではより深く製品のメリット・デメリットを語ったり、メイクのハウツーを解説したり、より専門的なコンテンツが配信されています。インスタグラムのリール(TikTokのような新機能)やストーリーズというよりは、ミニYouTubeのようなイメージです。

* もっと基礎から小紅書について知りたい方は以下の記事を、またはネットラジオをご視聴ください。ラジオは全3本で1話10分です。

関連記事:アプリ「小紅書」の基本情報(ChinaCosmeticLab


TOPICS|抖音は脱淘宝、小紅書は外部連携を解禁…ライブコマースに変化

◎小紅書は動画に注力、淘宝へのリンク解禁

小紅書はアプリ内に自社ECを持っています。今年に入り条件を満たすユーザーを対象にライブコマース機能を開放しましたが、連結できるのは小紅書のECページのみでした。

中国でのライブコマース人気は、コンテンツとしての面白さに加え、お得感が重要な要素です。トップライバーの薇娅(Viya)や李佳琦(Austin)でさえ、放送の企画内容の充実や説得力ある商品レコメンドに加え、限定セール価格や特別クーポンの配布を行っています。一方、小紅書のライブコマースは値引きに関する魅力はありませんでした。

その中で8月下旬、一部のユーザーが小紅書ライブで淘宝の販売ページを連結させて放送。まだ試験段階ですが、既に小紅書ライバーの中には価格競争に巻き込まれる懸念もあるようです。

小紅書から。右はビデオアカウントのKOL

小紅書から。右はビデオアカウントのKOL

また小紅書は8月15日、ビデオアカウント機能を立ち上げました。これは500フォロワー以上で1分以上の動画を複数投稿したことのあるアカウント、またはBilibiliなど外部のSNSでフォロワーが著しく多い新規参入者に向けた機能です。

ビデオアカウントとして登録すると、最長15分の動画が投稿できる他、金銭的な補助が受けられたり、または企業案件を案内してもらえたりなど多くのメリットがあります。またクリエイターセンターから動画の視聴完了率や平均再生時間などのデータを見ることも可能です。小紅書のデータによると、クリエイターの97%が動画を投稿しており、フォロワーを2倍以上に増やしたクリエイターの90%に動画投稿の習慣があるといいます。 

小紅書は誕生以来、ECアプリとしての成長を描いていましたが、この2年でECにある程度の見切りをつけ、コンテンツに注力することで広告収入の拡大を急いできました。ビデオやライブの流れがある今、自社ECに拘らず、さらにクリエイターを呼び込む施策も打ち出したということでしょう。

◎抖音はサービス料値上げ、淘宝ら締め出し

一方、短時間動画プラットフォームの抖音(中国のTikTok)は淘宝など外部ECを締め出しにかかっています。抖音のコンテンツマーケティングプラットフォーム・星図は8月20日、サードパーティ(淘宝、Tmall、京東など)の商品リンクでライブコマースを行う場合、20%のサービス料金を請求すると発表。抖音のショップは5%が請求されます。

また6日からはライブコマースのショッピングカートへのアクセスに、サードパーティであっても抖音の決済プラットフォームを経由する必要があり、10月9日にはサードパーティの商品は抖音のショッピングカートに入れることすらできなくなるといいます。

抖音は既に中国の人気アプリで、ライブコマース機能も活況です。ライバルの快手(短時間動画アプリ)は京東と提携し、脱淘宝の路線を強化していますが、抖音は自社ショップに一本化する方針となりました。

■ 時間があればこれも読みたい

・アングル:中国新興コスメ完美日記、Z世代人気で欧米大手を猛追(Reuters 8/26)→ 中国内で国産コスメがどのようにして育ったかが、代表的ブランド「完美日記」を例に書かれています(後半は親会社の逸仙電商の話が大半)。

・世界ユニコーンランキング、第1位はバイトダンス、中国3社がTOP10にランクイン(36Kr 8/31)→滴滴出行(Didi)、快手もトップ10入り

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Writing : Anna Usui - supported by ‘the Letter’

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